畳のある家

家づくりを一緒に進めていると「和室が欲しい」という要望を受けます。フローリングが主流となり和室から洋室にすることも多いなか、少しのスペースだけでも畳がある部屋が欲しいとお話されます。生活様式の変化もあり昔と比べると畳に触れる機会が減りましたが、出会うとどこか懐かしくほっとする空間。特に寒い冬の時期は畳に炬燵に蜜柑はぐっとくるものがあります。感性に訴えかけるものがあるのは勿論ですが、実はお家を快適にする効果をもつ優れものでもあります。畳の機能とあわせて洋室にも馴染む畳のある家を紹介していきます。

畳は優れもの

細かく話すと多くの良い面がありますが、今回は大きく5つ畳の優秀な機能を紹介。メーカーや畳屋さんによっても様々ですが基本的に畳表、保護剤(クッション材)、補強材、断熱材、裏面材(滑り止め材)の5層で成り立っています。それらがそれぞれ力を発揮して畳を優れものにしています。


1.弾力性と吸音効果

畳の上を歩くと程よい沈み押し返される弾力性を感じたことはないですか?これは畳の表面である「畳表」に使われるイ草が関係しています。イ草は繊維質の植物を織りつくられており、中はスポンジのようなふかふかしたものが詰まっています。このふかふかに空気がたくさん含まれており適度な弾力性を生み出しています。そして弾力性に加えてふかふかが衝撃や音を吸収する効果もあります。特に近隣に音が響きやすいマンションだと子供さんが走り回っても音が響きにくいのでうってつけです。


2.保温と断熱

空気には「熱を通しにくい」という性質があり、この「空気を含む」というのは熱を通しにくいつくりともいえます。そのため夏はひんやり涼しく、冬は暖かさを保てます。たくさん空気を含むことで夏は暑い空気を、冬は冷たい空気を遮断する断熱性と保温性に優れています。


3.湿度調整

畳を断面からみるとスポンジのように小さな穴がいくつも空いています。ここで湿気を吸ったり吐きだすことで快適な湿度に調整しています。湿度の高い日本の気候にあった住宅材ともいえます。


4.空気の浄化と癒し

イ草のふわふわとしたスポンジにある小さな穴が空気中の有害物質を吸着。窒素やシックハウス病の原因とされるホルムアルデヒドなどの有害物質を 吸い込み、空気を浄化する機能を持っています。プラス畳特有の香り、イ草の清々しい香りには鎮痛効果や癒しの効果があるとされています。空気を浄化しながらリラックス効果をもたらしてくれます。


5.多様な使い方

住む人のライフスタイルにあわせた使い方ができるのが畳のいいところ。来客時は応接間や泊りであれば客間に、ベッドを必要としないため急な泊りでも慌てる必要はありません。直接寝転がっても痛みや冷たさがなく大の字で寝転がれば心地よく、そのまま寝てしまっても体が痛くなることもありません。子供さんの遊び場にも適しており赤ちゃんの頃はゴロゴロやハイハイをしても安心して遊ばせることができ、吸音性があるので成長してからも変わらずキッズスペースにしやすいです。


畳の魅力は分かったけれど実際どのように取り入れたらいいのか、悩む部分でもあるので実際にプラン&施工した事例を取り上げていきます。

畳のある家

数センチだけ1色プラス

1面全てではなくいち部分だけ差し色を加えることで畳の色を活かしつつお洒落な和室に仕上がります。天井が従来通りの目隠し天井のままでも、クロス貼りでもどちらでも相性がいいこと、差し色のカラーもどんなものでも合うのでおすすめのアレンジ方法です。

リノベーション内容としては壁のクロス貼り替えと畳張り替え(+天井のクロス貼り)梁を含む天井〜床の大胆なアクセント貼りで爽やかで洋風な和室に。

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2つ目は大きな柄の描かれた襖に、原色よりの橙色の壁。一見派手な印象を受けますが同系色でまとめることで程よい華やかさに昇華。

1面ではなく数cmだけ色をプラスする貼り方はおすすめです。
もうひとつ。思っているより幅を広く取るとバランスの良い仕上がりになります。

和のよさが際立つスタンダードリノベ

襖や壁紙を貼り替え、畳を新調とシンプルな手の入れ方で「和の良さ」を残したスタンダードな方法。張り替える畳を1帖畳にするとより和室らしくどこか懐かしい雰囲気になり、半帖畳あるいは琉球(風)畳にすると洋間との相性もよくこなれ感のある空間になります。

畳を選ぶ際に緑の入ったものを選ぶとあじのある和室になります。
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ひとつづきの和の空間

築年数を経たマンションではリビングの横に4.5帖の和室や納戸がある間取りが多くあります。間取りは変更せず活用した例を2つご紹介。
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元々扉ありの納戸だった4.5帖。
扉を取り払い、押入れはクローゼットに変更。隣のリビングとひと続きの半畳たたみを用いた和室。仕切りがなくリビングと和室の間でも「ごろん」と出来るのが嬉しいとお施主様からもご好評!横のリビングはフローリングで冬は床暖房を使用するものの畳の特製「冬は暖かく」で畳に足を乗っけても温度差をあまり感じません。反対に夏は「心地いい涼感」でフローリング、畳ともにほど良いひんやり感が心地よいそうです。和室の枠を白く、ヘリ部分を隣接する床色と合わせないと浮いてしますのでご注意を!

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こちらもLDKにひっついた4.5帖ほどの和室。
壁ではなく襖で空間を仕切れるため、全開にするとリビングの広さをプラス、反対に閉め切ると個室に変化。小さな子供さんの様子をみながら家事ができたり、子供さんの遊び場になったり、こじんまりとした客間になったりと多様な使い方ができます。上の家とは反対で和室の枠にしっかりした色を入れたことでメリハリのある内装に。
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リビング側からみると壁があることもあり、同じ空間にあるもののどこか特別な一角のようにも思えます。

活用編

襖や畳、天井(目隠し天井、格天井など)といった和室を彩る要素が多くあるなか持て余し気味なのが「床の間」
マンションではあまり見かけませんが、戸建では床の間のある和室は少なくありません。仏教の神聖な場所として仏具を飾る棚を起源とし時代と共に意味合いや使い方も変化していきました。現代では床の間のある暮らしは馴染みのない人も多くなっています。

とはいえ中古物件を購入すると和室と床の間はワンセットです。しかし「(床の間を)まったく活用していない」「雰囲気を壊さず活用したい」と持て余しがちで今の生活に合わせて有効活用したいという声を耳にします。


床の間を活用

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寝室兼クローゼットにされるということで、押入れの中段も取り払いロングコートも難なく掛けられるクローゼットに。隣の床の間は立派な柱はそのままに棚を設けちょっとした鞄や荷物置き、あるいは作業スペースにもなる「なんでもスペース」に。

まとめ

古臭いイメージもある和室ですが、半帖畳/琉球(風)畳の登場もあり人気も高まっている畳のある家。カラー展開も豊富で組み合わせも自由で、人気アニメ鬼滅の刃とコラボしたものなどもありフローリングの色決めよりも時間を掛ける方も珍しくありません。機能も撥水加工の施されたもの、防音性/吸音性を高めたマンションリフォーム推奨のもの、ペット用などバリエーションも様々です。住まいにあった畳のある暮らしを楽しんでみてください。